ここのところ、会社の倒産が増えている。
IT関連の派遣ビジネスも冷え込み、新規システム受注も減っている。
まさか、システムが負債で倒産する会社はないと思うが、こんな言葉を思い出した。
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に在籍していたときにあるパートナーが某金融会社と大口契約がとれた決定的な文句があったそうだ。
「コンピューターは資産ではない。負債だ!」
1980年代後半のバブル期で第3次オンラインと言われる時代である。大手のSI業者(システムインテグレーション)の営業が金融会社を接待付けにして何とか仕事を取ろうとしていた。
「システム導入すると仕事が効率的になりますよ。営業売り上げが上がりますよ。経費削減になりますよ。」といいことばっかり言っていた時代だ。
システム導入でうまくいく会社もあるけれど、失敗する会社もある。
日経コンピューター誌にも、実際には半分以上が失敗しているという話がある。
失敗する理由は、いろいろある
- 期待したシステムにならなかった
- 開発期間が3年と長く、その間に外部環境・内部環境とも変わってしまった
- 費用がかかった割には、効果がない
- 現場にそぐわないシステムで使いづらい など
ただこれらの原因は、SI業者だけにあるわけではない。
- 複雑すぎる業務を無理にシステム化しようとした
- 判断をSI業者に丸投げ
- 社員のITリテラシー
- システム設計のたびたびの修正変更 など
お金のやり取りは一方通行だが、契約が締結した以上は双方に問題があると思う。
もともと人が介在してビジネスをやっていたことを、コンピューターにやらせるというところで、すべての問題が解決するわけではない。古い課題が消え、新しい課題が発生する。
その課題について全体的に把握して、どう判断するかどうか?
「不満ではあるが、何も変えない」というのがリスクをとらないので一番多くとる選択だろう。
しかし外部環境が変わっている以上は、「何も変えない」というのがリスクの高い選択となることもある。
一度、システムを導入すると変えられなくなる場合が多い。社員が慣れ親しんだシステムは不満があっても、そのまま使い続けた方が新しいトラブルを生まなくて済むと思うからだ。
だけど、それは毎月の高額な保守料金を支払う契約を続けると同時に、外部環境だけでなく内部環境が変わってもシステムを変えることができないという「負債」を背負い込むことになる。
SI業者の営業は一度納品したら変えることはしづらいということをよく知っているために、最初は損をしてもいいといういうつもりで値段を極端に下げたり接待攻撃をしかける。
最初の話は、20年前でもそのことになんとなく気付いていたから、「負債」という言葉に反応して信用が築けて契約が取れたのではなかろうか。
お客さまの負債を少しでも下げることができれば、その分だけ利益になるから何かお役に立てることがあればいいな。