3月
31
2005

【本】「レクサス」が一番になった理由(わけ)

ボブ・スリーヴァ著
小学館
ISBN4-09-341091-7

トヨタ自動車の「レクサス」がなぜアメリカで成功したかということを、詳細に分析している。マーケッティングの実践例としてはとてもわかりやすい本である。

トヨタ自動車の「レクサス」というブランドでアメリカで販売されているものが売れている。「レクサス」は、日本では、セルシオ、ウィンダム、アリスト、ソアラ、アルテッツア、ランドクルーザー、ランドクルーザー・シグナス、ハリアーというブランド群に相当する。

旧来のトヨタのカローラ、クラウンなどというブランドではなく、顧客層を
控えめなリッチな層にあわせたものである。この顧客層は、ベンツやアウディなどの層とぶつかる。

アメリカでは、日本車といえば性能は良いがデザインやブランドに弱いというブランドイメージがある。またアメリカ人の大半は今でもアメリカ車を乗り回す。レクサスのブランド群全体の売上は、フォードの1トラックに及ばない。日本車や欧州車に乗るのは、他の人とは違う個性を強調するためでもある。

そのため、「トヨタ」という旧来のブランドを強調せずに、「レクサス」というブランドにする決断を豊田英二元会長が行った。新しいブランドを作る準備のため、社運をかけて現状のベンツなどのブランド分析、新型車の研究などに時間と資金を投入した。

レクサスの新しいブランドは、上述の控えめなリッチな層の要望にぴったりとあった。そして、その評判はその層の上下左右へじわじわと広がり、「レクサス」というブランドはいまは押しも押されぬブランドに定着した。「レクサス=高級車で性能がよい、デザインも悪くない」という常識となった。

日本のもの作りのすばらしさも良いが、現地で販売するアメリカ人の販売戦略が見事に結びついて成功した、良い事例である。このレクサスの成功こそが、トヨタを世界No.2まで上り詰めた理由でもあるだろう。

・ブランドとは

トヨタ自動車がバブル期にマネーゲームをせずに、こうしてアメリカ戦略への研究・開発をしてきたことは注目に値する。トヨタ自身の欠点を把握した上で、良い点にみがきをかけ、新しいブランド構築に成功した。

私はマーケッティングについては素人であるが、知人の影響もあって「ブランド」に関する勉強をしている。「ブランド」というものが少しわかりかけている。

テレビや雑誌などに出てくる「ブランド」といえば高級ブティックとその商品のイメージしかなかった。

・良い商品だけど、とても高い
・身に付ければ「私はお金を持っているんだぞ」とアピールできる
・商品についての歴史や主張などを知らなくても、ものがよければよい
・そのブランドを持たないと恥ずかしいという(ルイ・ヴィトン)
・原価からかけはなれている
・日本では庶民が無理をして買っている

だがブランドは高級品だけとはかぎらない。ポテトチップスといえば、カルビーの商品を買ってしまうし、自動販売機でもいつものコーヒーやジュースを買ってしまう。ついつい、いつもの商品に手が届いてしまう。忙しいときなど、同じ商品を買ってしまうものだ。外食するときのレストランや居酒屋も、なじみのところへ行くことが多い。

ブランドとは、脳への刷り込みではないだろうか?

人間の知能や記憶には限りがある。スーパーマーケットで商品を購入するときに、最適な選択肢を計算するわけではない。
「スーパーAの特売は、豚の合挽肉100g98円、鳥の手羽5本で180円、にんじん5本100円…、スーパーBはの特売は云々などの外部情報と、昨日は焼肉だったので避けたい、夫が出張で夕食は取らない。スーパーAとスーパーBは遠いのでどちらか一方だけに行くことにしたいなどの条件」
以上の情報と条件はもっとたくさんあると思う。そういったたくさんの情報と条件から、本日の最適な選択肢を計算する。最適というのも、時間なのか費用なのか、そのバランスなのか。そういったことが瞬時にできるわけではない。

また情報については細部まで知らされていない。情報としてあっても分析することにも限界がある。化粧品の成分表示は詳しくのっているが、自分の肌に最適なものを計算して選ぶわけではない。
これまで資生堂をつかっていて、決して悪くないからなんとなく使いつづけているということだ。

世の中には、同様の商品が日本にたくさんあるし、世界には無数の商品がある。日本の資生堂のアジアンというブランドが売れても、他にもっと安くてよい商品がある可能性がある。ただ、その商品を知る機会がない。たくさんの埋もれている商品の中から発掘することができない。無名な商品では売れないので、供給量が少なく、結局一度手に入れることができたとしても、2つ目は手に入れることができないかもしれない。

ブランドというのは、「化粧品ならばアジアン」「おなか空いた時はポテトチップス、ポテトチップスならばカルビー」というように、人々の脳の中へ刷り込むこと。そして刷り込んだ情報が消えないように、商品を流通させて目に触れつづけるということである。

値段が高くさほど売れない、高級車や高級時計、高級衣料ならば、商品量に限りがあるので、テレビや雑誌などに露出する機会を多くして、ステータスというブランドイメージというのを展開する。

それぞれのジャンルがもつブランド戦略というのは異なるが、「ブランド」の社会科学的な性質はこの歳になってはじめて腑に落ちた気がする。

そうなれば、「ブランド」について、社会心理学と認知心理学的に深く分析すれば、ブランド戦略的に再発見が生まれるかもしれない。

Written by in: 楽天日記 |

コメントはまだありません »


コメント&トラックバック




トラックバック URL

コメントのRSS feed