9月に入ってもまだ暑い昼下がり。
会社に遅刻して表参道を急いで歩いていた。平日というのに人通りは多い。

表参道の坂を登っていくと、ちょうど表参道ヒルズの前で、声をかけられた。

私が立ち止まると、さっと私の左前に立つ。そして、名刺をこちらに見せて話かける。

「すみません。こういうものですが、土日だけでいいのですが、俳優になりませんか?」

頭の中でスパークした。何が何だか分からない。
キャッチセールスやティッシュ配りはある、渋谷の前で声をかける若いお兄さんはいる。

この、この、この、おっさんが。。。。自分の若い時の顔を思い浮かべ、そして今の鏡に映った姿を想像する。

なんと返せばいいか。

キャッチセールスの類か、詐欺か、、、ここまで変化球を入れられると頭の中で処理ができない。

それまで歩きながら考えていたことは、いま開発中のプログラムの落とし所と、将来作るべきプログラムの構想を考えながらいた。ときどき、本を読みながらこの界隈を歩くこともある。

つまり表参道という、ルイヴィトンなどブランドのお店や若者向けのブティックが並ぶ日本一のファッション街でありながら、数学の式を解くようにプログラムのことを考えている。

およそファッションとは遠い世界の私が、「俳優になりませんか?」と声をかけられた。

自分にないものに挑戦してもいい。チャンスがあれば何でもやってみようという方向にかけてもいい。

騙されているのならば、もうちょっと騙されてみてもいい。

だけど、土日は名古屋に帰りたい。土日は静かに自分の時を過ごしたい。。。。。

次に出た言葉は、

「すみません。あまり興味がないもので。。。。。。」

話は終わった。

娘が小さいときに、子役にするほどかわいいと思った。
実際に知らない女子高生に呼び止められて「お子さんとてもかわいいですね」と言われたことがある。

妻も女子大生のときに、ミスxxに選ばれたことがあるそうな。

だけど、、、、、私が、、、、
親を恨むわけではないが、とてもじゃないがイケメンではないよ。
それに俳優的なトレーニングは何もしていないし、滑舌も悪い。

まあ、娘や妻はスカウトされていないが、私はスカウトされたのだと娘・妻に自慢しよう。
そして、冥途のみやげ話にしておこう。

だけど、本当に本当にスカウトだったのかな?ちょっとだけ惜しい気がする。
でも、私がやらなくていけないのは、プログラム、プログラム。
子どもが大学行くまで働け、働け。
と言い聞かして、先へ進もう。

9月だというのに、30度を越す日差しが強い昼だった。